■抄録
背景:アルテスネイトは抗マラリア薬であるが、動物実験、ヒト臨床試験の広い癌スペクトルで抗がん作用を示すことは知られている。
試験目的:本試験は大腸がんに対するアルテスネイト薬の抗癌作用と忍容性を確認する。
治験施設:George University (ロンドン)
(プラセボ:有効成分は入っていない偽物の薬)
試験方法:本試験は、単施設無作為化 二重盲検プラセボ対照試験である。
生検で転移がない単発性大腸がんと診断され、治癒的切除を施行予定の患者(n=23)を無作為に二群に割り付け、手術施行前14日間 アルテスネイト投与、プラセボを投与(n=11)した。
試験 :アルテスネイトは以下の結果から 大腸がんに対して抗増殖効果があり、高い忍容性が示された。無作為化された両群は臨床的、がん特異性において比較可能であった。
20名の患者(アルテスネイト群9名、プラセボ群11名)試験を完了した。
結果:5年後、アルテスネイト群1名、プラセボ群6名に大腸がんの再発を見た。
アルテスネイト群は、死亡例はなかったが、プラセボ群は3名の死亡例があった。
アルテスネイトは、大腸がんに再発防止(転移能力喪失)と抗腫瘍効果が認められた。
■序
-転移のない大腸がんの根治療法は手術であるが、症状を進行させないためには、手術施行前のネオアジュバント化学療法 又は放射線治療が併用される。
-最善の治療法における予後は診断後、5年間の無病生存期間、又は全生存期間を~60%以上増加すること。
-アルテスネイトは、薬用植物成分アルテミシニンの化学修飾体で、経口、直腸、非経口投与が可能な抗マラリア薬として古くから汎用されているが、その後アルテミシニンの抗がん作用について、in vitro及び動物モデルの研究で幅広い抗癌作用が確認された。
-アルテミシニンはがん細胞増殖及び血管新生を抑制し、アポトーシスを引き起こすことが報告
されている。
-ヒトに対するアルテミシニン、アルテスネイトの抗がん作用については、個々の症例報告、
盲検パイロット試験で幾つかの報告がある。
-本試験は初めて厳格な試験計画の下で、アルテスネイトを単剤で使用したときの抗大腸がん効
果、及び忍容性をプラセボ対照試験で、検討したものである。