ハイパーサーミア治療の現状とアルテスネイト併用治療について
ハイパーサーミア(温熱療法)の治療成績を向上させるためには、アジュバント(補助的な治療や製剤)の活用が極めて重要です。
効果的なアジュバント戦略に関する重要ポイントを医学的・臨床的観点から詳述致します。
- 単独治療の限界
ハイパーサーミア単体では、治療反応率が限定的であることが指摘されています。これは腫瘍局所の熱耐性、血流分布、酸素分圧の低さが原因とされています。 - エネルギー分布の不均一性
特に深部臓器における加温の均一性が課題となり、局所制御効果がばらつくことがあります。
アジュバント(補助的な治療や製剤)として注力すべきポイント
1.アルテスネイト
抗マラリア薬として知られるアルテスネイトは、がん細胞に対してもROS(活性酸素種)生成を介した細胞死を誘導することが報告されており、ハイパーサーミアにより酸化ストレスが増強されることで、相乗的な抗腫瘍効果が期待できます。
ハイパーサーミア治療前に、アルテスネイト治療を行い、熱依存的なアポトーシス(細胞の自死)誘導を強化します。
2. 免疫系との協調
・ハイパーサーミアは、*HSP(ヒートショックプロテイン)の発現を高め、抗原提示能を高めると同時に *免疫原生細胞死を促進します。
・アルテスネイトが *マクロファージ極性転換や樹状細胞活性に影響する可能性も併せて検証する価値があります。
*HSP(ヒートショックプロテイン、Heat Shock Protein)とは、細胞がストレス(特に熱)を受けたときに増加するタンパク質の一群のことです。HSPは、体内のタンパク質を守ったり修復したりする働きがあり、「細胞の修理屋さん」とも呼ばれます。
*免疫原性細胞死とは、免疫系を活性化する特殊なタイプの細胞死のことです。通常の細胞死(アポトーシス)は免疫系に目立たずに処理されますが、「異常が起きたぞ!」というシグナルを免疫に送る為に抗腫瘍免疫の観点から非常に注目されています。
*マクロファージ極性転換とは、マクロファージが周囲の環境に応じて異なる機能的状態に変化する現象のことを指します。簡単に言えば、マクロファージが「どんな働きをするか」を状況に応じて切り替えることです。